ソニーの最新ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM3」。
2017年に登場した初代モデル「WF-1000X」に続く第2世代モデル。ソニー・オーディオの代名詞たるノイズキャンセリング性能にさらなる磨きをかけ、完全ワイヤレスイヤホンの中ではトップクラスの遮音性、静音性を誇るモデルとして早くも人気だ。
また、ワイヤレスイヤホン(Bluetoothイヤホン)の弱点として挙げられるワイヤレス接続の安定感も向上。Bluetooth最新規格「Bluetooth 5.0」に対応したのでBluetooth 4.1止まりだった前作よりも音切れや接続切れの発生が少なくなった。
とかく前作はワイヤレス接続が不安定だったり、動画視聴時の遅延(音ズレ)が酷かったりとマイナス点が目立ったが、「WF-1000XM3」であれば屋外でも普通に音楽が聞ける。そのうえでの高性能ノイズキャンセリング、そして高音質オーディオだ。
以下、ソニーの最新ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM3」をレビューしていく。ソニー製品の愛好家はもちろん、オーディオ重視で楽しめるワイヤレスイヤホンを探している人がいたら記事をチェックしてみてほしい。
この記事の目次(タッチで移動)
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【レビュー対象製品】WF-1000XM3
発売時期 | 2019年7月 |
市場価格 |
(追記)2021年7月時点で市場価格2万円前後に値下げされた。
カラーリングはブラックとプラチナシルバーの2色。レビューはブラックで行う。
【追記】2021年6月に後継モデル「WF-1000XM4」が発売開始となりました
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ソニー「WF-1000X M3」の製品概要
機能ONで周囲の騒音(主に低周波音)を静音化できる。オーディオ止めての耳栓利用も可能。
通常オーディオをハイレゾ相当の音質に補正して(アップスケーリングして)再生できる。専用アプリから機能ON/OFF可能。
従来モデルの「Bluetooth 4.1」から進化。屋外で使うときのワイヤレス接続の安定感など向上。
イヤホン単体8時間、ケース併用で最大36時間。ノイズキャンセリング常時ONだとケース併用で最大24時間に減少。
ハンズフリー通話のイヤホン&マイクとして利用可能。ノイズカットなく、騒音ある場所だと周囲の音が入り込む。8
まさかの防水非対応。雨濡れや汗だく利用は注意。
Bluetoothバージョン | 5.0 |
Bluetooth対応コーデック | SBC、AAC |
バッテリー駆動時間 | イヤホン単体8時間、ケース併用で最大36時間 |
(ノイズキャンセリング利用時)イヤホン単体6時間、ケース併用で最大24時間 | |
充電方法 | USB Type-C(有線) |
防水性能 | × |
通話マイク | ○(ノイズカットなし) |
外音取り組み機能 | ○ |
ノイズキャンセリング(ANC) | ○ |
ペアリング仕様
マルチペアリング | 対応(最大8台) |
マルチポイント | × |
複数デバイス間のワンタッチでのペアリング切り替え | 対応 |
充電ケースは異様にデカい
充電ケースは他社製品に比べて大きめ。
特に厚みが2.8cmと分厚く、男性ズボンのポケットに入れたときなどモッコリしがち。
ケースサイズのわりにバッテリー容量は普通。ノイズキャンセリングONの状態で公称24時間とあくまで業界一般的な水準だ。いや本当に、なぜここまでケースが大きくなったのか不思議でしょうがない。
イヤホンは小型ヘッドセットのようなデザイン
イヤホン形状は前作「WF-1000X」同様に楕円形デザイン。耳に付けると小型ヘッドセットのようなビジュアルになる。
イヤホンは片耳8gとワイヤレスイヤホンにしては少し重め。
いざ耳に付けるとそこまで重さは感じないのだが、耳に付けてる感、引っ付いてる感は多分にある。さながら小型ヘッドセットのような付け心地だ。
ほぼほぼイヤーピースだけで引っ付いてる状態なので、イヤーピースのサイズ調整は必須。
充電はUSB Type-Cケーブルで可能、ワイヤレス充電には非対応
USB Type-Cケーブルを使った有線充電に対応。Qi充電(ワイヤレス充電)には対応せず。
前作モデル「WF-1000X」はmicroUSBだったが、すでに2019年とありUSB Type-Cに刷新された。
短時間充電機能も備えており、10分の充電で90分相当のバッテリーが充電できる。朝方など忙しいときでもパパっとバッテリー残量が確保できてよし。
ペアリング勝手
ソニー「WF-1000XM3」の主なペアリング仕様
マルチペアリング | 対応(最大8台) |
新規ペアリングモードの起動方法 | 装着した左右イヤホンのタッチパッドを同時に7秒押し |
マルチポイント | × |
複数デバイス間のワンタッチでのペアリング切り替え | 対応 |
複数デバイス間のワンタッチでのペアリング切り替え可能
ソニー「WF-1000X M3」はマルチペアリング対応。最大8台のデバイスのペアリング情報が記録できる。
なおかつ、デバイス間でのペアリング切り替えはBluetooth設定画面からワンタッチで可能。格安ワイヤレスイヤホンのように都度現在のペアリングを解除する必要なく、上書きする形でペアリングが移せる。
Androidスマホであればケース表面にあるNFCをタッチによるだけでペアリングが切り替えられる。また、Android版の専用アプリであれば、アプリトップ画面にある「接続する」ボタンをタッチすればペアリングが切り替えられる。
これもう非常にペアリング勝手がよい。他社も見習ってほしいレベル。
ソニー「WF-1000XM3」を実際に使ってみた感想とレビュー
ノイズキャンセリングは文句なし、今日トップの静けさ
ソニー「WF-1000X M3」の代名詞たるノイズキャンセリング。
機能ONにすると低周波音(濁音ノイズ)を中心に除去。オーディオ再生した状態であれば、ほぼほぼ周囲の音が気にならない、オーディオだけに集中できる静寂空間が作れる。
ノイズキャンセリングにつきもののホワイトノイズ(サーッといった機械音)も発生しておらず、オーディオ止めての耳栓利用でも使いやすい。
これにくわえて、イヤーピースを大きめのものに変更すれば物理的な遮音性が高まり、ノイズキャンセリングの効果もより高まる。イヤーピースによる耳への閉塞感が嫌いな人でなければイヤーピースのサイズ調整もお試しあれ。
外音取り込み機能も実用レベルを維持
外音取り込み機能あり(ソニーいわく”アンビエントサウンド”)。
ノイズキャンセリング用の集音マイクを使って周囲の音を集音。イヤホンを付けたまま周囲の音が聞き取れる。いわば補聴器のような機能だ。
いざ使うと結構なホワイトノイズ(サーっという音)が入っているが、周囲の音はきちんと聞き取れている。常用するには辛そう(うるさそう)だが、コンビニレジで使う程度であればなんとか耐えられると思う。
風切り音は結構あり(ノイズキャンセリング&外音取り込み利用時)
ノイズキャンセリングも外音取り込み機能も集音マイクを使って周囲の音を集音している。そのせいで屋外で使うと”シュバババ”といった風切り音(周囲の風の音)も結構な音量で入り込む。
専用アプリに「風ノイズ低減」モードあり、これを使えば風切り音を多少なりに除去できるのだが、同モードはノイズキャンセリング利用時には利用できない。こればかりは残念なところ。
音質はクリア、「DSEE HX」と併用ならハイレゾ風味のクリアサウンドに
スタンダードの状態だと中音〜高音域に特化。低音も過不足なく出ていて非常に音の幅が広い。完全ワイヤレスイヤホンでも、ここまでのオーディオ表現が可能なのかと時代の進歩を感じる。
そのうえで最大のセールスポイントが「DSEE HX」機能。
ソニー独自のアップスケーリング技術で機能ONにすると通常オーディオをハイレゾ相当に高音質補正して再生できる。
実際に機能ONにして聞いてみると、通常よりも音がクリアに。なおかつ音の重厚感が気持ち2割くらい増す。音の解像度が劇的に変わるので、ハイレゾないにしろハイレゾ相当の高音質が嘘ではないと分かる。
ただ、機能ONにするとバッテリー駆動時間がイヤホン単体3時間(通常6時間)前後にまで減少する。ケース併用でも最大15時間ほどのバッテリーしか持たない。この点は注意あれ。
ワイヤレス接続の安定感は向上、いざとなれば「接続優先モード」で乗り切れる
ワイヤレス接続の安定感は前作モデルよりも改善された。ここ2年で主流になったBluetooth最新規格「Bluetooth 5.0」に対応したので、Bluetooth 5.0対応スマホとペアリングして使えば音飛びや接続切れなどほぼ遭遇することはない。
ただ、それでも100点満点の安定感というわけではない。人混みの中で使うと周囲の人のBluetoothデバイスと電波干渉して”ブツん”みたいな音が鳴ったりする。
どうしても接続が不安定な場合は専用アプリで「接続優先モード」に切り替えればマシになる。多少なりに音質が落ちるが、出先でストレスなく使えるのなら安いもんだろう。
ソニー「WF-1000XM3」の気になったところ(あるいはデメリット)
通話マイクは酷い
イヤホンマイクを使った通話が可能だが、正直クオリティは良くない。
まず集音性能が弱い。そのうえノイズカット機能を搭載していないので屋外で使うと騒音や風の音など除去されずに多分に残る。
基本的には自宅や静かな場所で使うのにとどめた方がいい。屋外や騒音のある場所ならスマホの通話マイクの方がまだ優秀だ。
タッチセンサーの感度が悪い
イヤホン外側にタッチセンサーを搭載しているが、思いのほか反応が悪い。
ワンタップまだしも、ツータップ、ツリータップだと高確率で反応せず、ワンタップとして処理されてしまうのでストレスに感じる。点数で言えば32点/100点くらいの出来だ。購入に際して割り切りが必要だと思う。
【補足】タッチ操作コマンドについて
タッチ操作コマンドは専用アプリ(Headphones Connect)から割り当て可能。
イヤホン左右に同一、あるいは異なるコントロールを設定できる。コントロールは「再生コントロール」「外音コントロール」「音量コントロール」ほか、Googleアシスタントやアレクサ操作も選べる。
再生コントロール
1回タップ | オーディオ再生/停止 |
2回タップ | 曲送り |
3回タップ | 曲戻し |
長押し | 音声アシスタント起動 |
外音コントロール
1回タップ | ノイズキャンセリングON → 外音取り込み機能ON → OFF →(以下繰り返し)※1 |
長押し | クイックアテンション起動※2 |
※1 1回タップするごとに「→」の順番で機能切り替え
※2 長押ししている間だけ外音取り込み機能をONに
まさかの防水非対応
高価格帯モデルでは珍しく防水非対応。雨の日に使ったり、ジムやジョギングなど汗だくの状態で使うには不安が残る。
【まとめ】細かい欠点さえ許容できれば「買い」
ソニー「WF-1000X M3」をレビューしてきた。
ノイズキャンセリングとオーディオ性能は言うことなし。ワイヤレスイヤホンの中ではトップクラスないしトップの実力だし、セールスポイントとして十分すぎる完成度だ。
一方で欠点も目立つ。マイク品質の悪さ、タッチセンサーの感度の悪さ、防水未対応、ケースがデカイなどなど。同欠点が許容できるか否かが、そっくりそのままソニー「WF-1000X M3」を購入すべきか否かに繋がってくる。
もっぱら通話マイクを使いたい人だったり、運動中にイヤホンを使いたい人には合わないかもしれない。どちらかと言うと「音楽が聞ければ十分」「動画が見れれば問題なし」という人におすすめだ。
オーディオとしてはただただ完成度が高いので満足できるはず。使い方に合う人であれば、ぜひにソニー「WF-1000X M3」を試してみてほしい。
レビュー対象製品
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